テキストサイズ

仔犬のすてっぷ

第31章 激突する、LOVE IT


「……お前さん、この世界に来てからテレビとか全然見てないんだろ?
どうせあっちに帰るんだし、人が人に恋をするように、お金さえ集まれば何でもできるからって金集めにうつつを抜かしたんだろうがね。

……あっちとは違って、こっちの世界は比較的平和で、ネットワークの類は分断される事なく正常に機能している。それをお前さんは悪用して来てるんだから…足が付かない方法ばかり磨くんじゃなく、この世界の常識や教養、カルチャーなんかの…他事ももっと勉強しとくべきだったな」

「……何が言いたい?」

霧夜にはまだ、自分の状況が分かっていないらしく……
平静を装っているつもりなんだろうけど……明らかに声が上擦っていた。


「ハッキリ言ってあげましょう、霧夜くん☆
君の預金は全て警察に差し押えられています。
銀行のカード類は、ただのプラスチックの板切れになっちまってるんだよ〜ん♡」

舌をレロレロと出し入れしながら変顔までして丁寧に霧夜を小馬鹿にした。


「……そんな・・・私の可愛いお金達が……使え、ない?!
そ、そんなバカなああああぁ〜〜っ!」



あの取り乱し方は……
・・・ほ、本当に知らなかったんだ…(大汗)

「向こうの世界とこっちじゃ金の価値も違うだろ?そのくらいはじめから気付いて然りだと思うんだが・・・」

 霧夜の取り乱しぶりに、霧夜を馬鹿にして、面白そうにからかっていたトーマスは目を点にして頭をガシガシと搔きながらため息をついた。


「……じ、じゃあ……スマホの決済機能も、カードレス銀行口座も……?」

「……銀行系は全部アウトなんだってば。スマホの場合は先にチャージしてある決済アプリは使えるだろうが……
と、いうか…プリベイドケータイじゃ無い普通のスマホだと…下手したらそっちも止まってんじゃねえか?」


ずわわわああぁん・・・・・

 ついさっきまで血気盛んで高揚して赤みを帯びていた霧夜の顔から、貧血で倒れるほど激しい勢いで血の気が引いた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ