テキストサイズ

仔犬のすてっぷ

第31章 激突する、LOVE IT


「……きっ…貴様っ……やってくれるじゃないか……」

あれだけの電撃を受けたにも関わらず、霧夜は再び立ち上がって身体のホコリを叩いて払う。

「お金の力でなんとか電撃を無効化出来たものの…袖に仕込んだ分のお金をほとんど消費してしまいました……って、え〜っと……」
 




「……なんで天井から現れた?まさか出番が来るまで……」
「いやあ、さっきは焦ったぜ。あのまま終わったら折角天井まで登った意味が無くなっちまうからなぁ」
「……そしたら君はただのアフロマンになって・・・」


「・・・無視するなあ!」


…和気あいあいと話すパンドラメンバーは、霧夜をすっかり蚊帳の外の扱いに格下げしてしまっていた。


「私をココまでコケにしたのは、貴方方が初めてですよ……」

ちらりと明美を見た霧夜は、次の瞬間には彼女の前にテレポートしたかのようなスピードで移動して、彼女の拘束を解いてしまった。


「……貴方にはまだ利用価値があります。姫に再び暗示にかけて自分のモノにしなさい」
「お断りするわ」

「……そう、お断り…って、ええっ?!」

……ここまで霧夜の思いのままにならない状況が続くと、彼がコメディアンにすら見えてくる。
今のセリフなんて、まさにノリツッコミみたいだったし(苦笑)


「貴方だって知っているでしょ?私の暗示は条件が揃わないと発動しない。
水滴が落ちる音は、外の雨が上がってしまって雨漏りが止まってて、音が出ていないし、抱きつきたくても幸が優希をしっかり抱いているから、まず彼を彼女から引き剥がさなければならないんだけど……貴方に、それができるとは思えないし。
それに、何より……」

明美は霧夜の顔をしっかりと睨みつけてから言い放った。


「貴方は私に雇われただけの、警備係なんだよ!雇われが雇い主に命令するなんて立場がいつ入れ替わったんだい?!私はそんな事認めていない。

・・・第一、私はフラレたんだよ。ここからあの子をどうこうしようなんて事したら、格好悪すぎるじゃないか……」

「明美…私、貴女のそういう潔いところは好きよ」


 幸お姉ちゃんは、僕を抱く力をギュッと強くしながら明美さんにそう話しかけた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ