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身代わりの妹が懐妊発覚して、そのまま皇帝の妻になりました

第2章 事の始まり

 周家の琴葉は、この時代には初の日本人の母と中国人の父を持つ混血人だ。
 年子の妹の琴音も、もちろん、混血人なのだが、二人はまるで双子のように顔がそっくりで、普段から親以外の人たちから間違えられる事が多々ある。

「琴葉も16になるのか……。ほら、素敵な男性だろう?」
「お父様、気が早いですよ。まだまだ勉強せねばならない事がたくさん。それに、私にはもったいないお話です」
(顔が気に入らないと言えるはずがないでしょ)
 心の声を飲み込み、琴葉はやんわりと断った。
 これで何度目の縁談の断りだろうか。
 この国では、女は15歳から嫁に行く習慣があり、16歳となると婚機を逃して行けず後家など囁かれてしまい、大変居づらくなるのだ。
 親として、お見合いでもいいから長女を先に嫁がせたいと思うのも自然な事だろう。
 そんな親の気持ちを知らずに、琴葉はある事を思いついた。
「お父様、先ほどの縁談、やはり、私は受ける事にします」
「いいのか? 色々学びたい事があって、今の女学校に通っているのに、それを途中で諦めるというのか?」
「あら、お父様。先ほどはあれほど、私に結婚、結婚と仰っていたじゃありませんか。どうしたのです? 私は、結婚してもその気になれば女学校へ通って夢を追いかけてもいいのだと考え直したのです。家事と学業の両立は、大変だという事は想像できますが、周家のために、長女としての役目を果たすのも悪くはないでしょ」
 ふふふと不敵な笑みを浮かべて話す琴葉に、父親はすっかり喜びを隠しきれないという様子だ。
 もちろん、これは、ある作戦だということは琴葉だけ内に秘めた事だ。
 まるで双子のようだと言われている妹を、長女である琴葉の身代わりでお見合いをしようとしているとは、この時は、誰もが疑わなかった。


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