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人身供物の村娘

第4章 迷子と恐怖

(あれ…ここは。)
気がつくと、黒狐の母屋の布団の上だった。
体は綺麗に拭かれ、新しい着物が着せられていた。
(たしか、芋を取りに行って…)
思い出した途端、菊理は耐え難い恐怖で体ががたがたと震えた。

「気がついたか」
その声を聞くと、部屋の襖から布を持って黒狐が訪れた。

「黒狐…様?」
そう言うと、ただ黒狐はたんたんと事情を説明した。
なんでも、夕刻になっても菊理が帰ってこないため、狐になり匂いを頼りに探したら
けもの道に入っていったと。
けもの道まで来てるのは危ないと、探し続けたら
狼に食われかけた菊理を見つけた。
あの時狼が菊理を文字通り食べようとしたが
威嚇をしたら諦めて逃げた…と。

「何も無くて良かったが…お前はバカか!」
そういきなり怒鳴られて、ビクッと菊理は肩を竦めた。

「我が見つけられたからいいが、今回だけかもしれん、あまり森へは行くなとは言いたくなかったが、そうも言ってられんな。
菊理、材料は我が揃えるから森へは近寄るな。」
そう有無を言わさない言葉は菊理にとって逆らう術がなかった。

それくらい怖かったのだ。
あの息も、舌を舐めずる獲物を見る目。
全てを恐怖に変える十分な材料となってしまったのだ。

それでも、黒狐は最後に。
「山菜も、芋も嬉しかったぞ。
ありがとうな。」

そう言って頭を撫でる、黒狐は
どこか優しい目と、つらそうな目をしていることに菊理は気づかなかった。

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