人身供物の村娘
第5章 恐怖の後の朝
黒狐が、そんな風に思っているとは菊理は思っておらず
目を丸くしていた。
そんな菊理にかまわず、黒狐は話している。
「贄となったおなごで、お主だけが
はじめから体を差し出そうとしていた。」
体なんか目的になかった、それなのにだんだん献身的に尽くす菊理に
黒狐は心惹かれていたのだそうだ。
森に行かせたときに、帰ってこないから
このまま逃げてしまったのかと思い
化けて探していたら、あの状況。
一瞬にして頭に血が上ったそうだ。
「黒狐様…。」
情けないだろう?
そういう黒狐の頬は、心なしか赤く感じられた。
「私からも申し上げてよろしいでしょうか?」
そうして、菊理も黒狐に向けて、話はじめた。
「私、昔から家は貧しかったから、行く末は贄となるか遊女に売られるか
どちらかの人間だったものなのです。
贄に決まって、村から祝いの人間とされたときも
胸はどこかぽっかり空いたように、苦しくもなくただ無情に生を終えると思っておりました。」
そう話す、菊理の顔はどこか遠い目をしていた。
その顔を見るのが、黒狐にはとてもつらかった。
しかし、次の菊理の言葉に黒狐は驚いた。
「でも、実際のお狐様はとてもおやさしくて
食べ物はおいしいし、無理な交わりをされようとしないし
少し女性のような手入れをされるところもかわいらしいですし」
そう続けて、一つ深呼吸すると
菊理は黒狐の目を見て一つ告げた。
「だから、そんな黒狐様が私は大好きなのです…。」
そういうと、顔が熱くなるのを感じた。
しかし、それは黒狐も一緒で。
ふいとそっぽを向かれてしまった。
しかししっぽが、ふわふわと揺れているあたり喜んでいるのがうかがえた。
「もし、黒狐様が私と交わりたいと申されるなら
菊理は、よろこんで初めてを捧げます。」
そこまで言って、菊理は立ち去ろうと腰を上げた。
つもりだった。
しかしそれはかなわなかった。
なぜなら、言い切った後に黒狐に腕をつかまれていたからだ。
痛くはないが、やさしくもないその強さに
黒狐も男性なんだと、菊理は実感しつつ
「黒狐様・・・?」
と声をかけるしかなかった。
目を丸くしていた。
そんな菊理にかまわず、黒狐は話している。
「贄となったおなごで、お主だけが
はじめから体を差し出そうとしていた。」
体なんか目的になかった、それなのにだんだん献身的に尽くす菊理に
黒狐は心惹かれていたのだそうだ。
森に行かせたときに、帰ってこないから
このまま逃げてしまったのかと思い
化けて探していたら、あの状況。
一瞬にして頭に血が上ったそうだ。
「黒狐様…。」
情けないだろう?
そういう黒狐の頬は、心なしか赤く感じられた。
「私からも申し上げてよろしいでしょうか?」
そうして、菊理も黒狐に向けて、話はじめた。
「私、昔から家は貧しかったから、行く末は贄となるか遊女に売られるか
どちらかの人間だったものなのです。
贄に決まって、村から祝いの人間とされたときも
胸はどこかぽっかり空いたように、苦しくもなくただ無情に生を終えると思っておりました。」
そう話す、菊理の顔はどこか遠い目をしていた。
その顔を見るのが、黒狐にはとてもつらかった。
しかし、次の菊理の言葉に黒狐は驚いた。
「でも、実際のお狐様はとてもおやさしくて
食べ物はおいしいし、無理な交わりをされようとしないし
少し女性のような手入れをされるところもかわいらしいですし」
そう続けて、一つ深呼吸すると
菊理は黒狐の目を見て一つ告げた。
「だから、そんな黒狐様が私は大好きなのです…。」
そういうと、顔が熱くなるのを感じた。
しかし、それは黒狐も一緒で。
ふいとそっぽを向かれてしまった。
しかししっぽが、ふわふわと揺れているあたり喜んでいるのがうかがえた。
「もし、黒狐様が私と交わりたいと申されるなら
菊理は、よろこんで初めてを捧げます。」
そこまで言って、菊理は立ち去ろうと腰を上げた。
つもりだった。
しかしそれはかなわなかった。
なぜなら、言い切った後に黒狐に腕をつかまれていたからだ。
痛くはないが、やさしくもないその強さに
黒狐も男性なんだと、菊理は実感しつつ
「黒狐様・・・?」
と声をかけるしかなかった。