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この村で年に一度行われる村祭り。
それは、元服の娘にとって悲しい祭りになるやもしれない出来事。

なぜなら、村祭りでは、年に一度黒狐さまへの供物として
元服の娘が、選ばれるから。

その後娘たちがどうなったかは、村の誰も知らないし
知ってはいけない、暗黙の掟だった。

そして、今日はその村の祭り。
菊理は、いつものように過ごしていた。

元服を迎えたときに、村の供物に決まり泣く母。
そして対象に喜ぶ父。
それは、とても名誉なことだと教えられてきた。
だから、菊理には母が
どうして泣いている理由がわからなかった。

「母様？村の繁栄の糧になれる菊理をを喜んでください。」
そう母に向かって話す菊理は、とてもうれしそうだったと。
のちに村の人間に話していたそうだ。

それから村祭りまで、母は菊理のことを大層可愛がった。
これから訪れる別れを、惜しむかのように。

そして、村祭り。
黒狐様に見合う様にと村が用意した着物。
それは、菊の花があしらわれた、とてもきれいな着物だった。