テキストサイズ

人身供物の村娘

第1章 年に一回の村祭り

「……いません。」



かくして、しっぽや耳の部分までしっかり(厳しく)洗うことが終わった菊理は、黒狐と部屋でゴロゴロとしていた。

黒狐について気づいたことがあった。
強引かと思ったらきちんとした世話をしてくれる。
ご飯も美味しい。
綺麗な着物や、ふかふかの布団もある。
簪(かんざし)などが好きだから、髪を伸ばすように話してきたこと。
しっぽや毛の生えてる耳などの洗い方にこだわりがあって1人だと3時間手入れにかけること。
なんなら今は目の前の鏡台で肌の化粧水と乳液とパックをしてる。
意外と乙女なところがあるところ。
そんなふうに思いながら黒狐を見ていると

「菊理もするか?
こいつは結構おすすめだぞ」
なんて声をかけてくる。
そして、私は結構ですと断った。

「元服したてでまだ大丈夫って思うなよ?
元服したあとから老化は始まるんだ。」
そんなふうに言う黒狐様がなんだかおかしくて
くすっと笑ってしまった。

「黒狐さま、少し聞いてもよろしいですか?」
なんだ?と答える黒狐に対して菊理が口を開いた。

「黒狐様は、なぜ私を無理にでも姦通なさらないのですか?
先程もそうでしたけど…。」
言っててなんだが恥ずかしくなったが、村の贄とはこういうことだと思っていたからだ。
だから、全ての男子の姦通の誘いを断ってきた。

「あー、勘違いしてるみたいだが、我は贄は抱かぬぞ。
炊事や身の回りの世話を頼む。」
そう言われて、少し複雑な気持ちになっていた事が菊理には分からなかった。

「…承知しました。」
そうだけ答えて、厠に向かった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ