テキストサイズ

人身供物の村娘

第2章 贄としての生活

贄としての生活は、今までの生活より
むしろ裕福と言えるような生活であった。
黒狐様の、身の回りの世話をし、3時間半の湯浴みは大変だがサラサラとなる指通りの良い髪や毛を触るのは心地が良かった。

そして、ここは結界なのかなにか妖術的なものが働いているのか、暑さ寒さなんかに困ることもなかった。

「黒狐様?膳をお持ちしました。」
初めは持ってきてもらっていた、夕飯なども
今は菊理が作り、黒狐に持って行っている。

「今日の膳は鶯豆の混ぜご飯か…」
一瞬ぴくりと眉を動かす黒狐に、菊理は怪訝に
「お嫌いでしたか?」
と聞くのが精一杯だった。

「いや、むしろ好物だ。」
そう言って箸を取り食し始める黒狐に安心して部屋を出ようとする。

「待て。」
そう黒狐に声をかけられると、菊理は踵を返して黒狐の方を向き
「如何しましたか?」
そう答えた。

「たまには一緒に食さぬか?
2人で食事もたまには悪くなかろう。」
そう答える黒狐に、内心菊理は嬉しさを覚えた。
いつもは、食事は一人で取りたいと部屋から出していたため1人で寂しく食べていたのだ。

嬉しくないわけが無い。
「宜しければ!」
そう笑顔で答える菊理に、黒狐も少し嬉しそうだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ