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蜜と獄 〜甘く壊して〜

第1章 【業界未経験の需要】






そして、この世界に引きずり込んだ人。




“顔バレしなければしてもイイよ”
そう言ったのは他の誰でもない私。
退屈だった毎日に嫌気が差して、息してない自分に気付いたから刺激があれば何か変わるかも知れないって思ったのが始まり。




毎日毎日煩いくらい声かけられて。
なんてしつこいナンパなんだろうと思っていたら夜の店のスカウトだった。
ある時、大事な展示会があり着物を着て出席していたら終わるまで待っていた堤さんに呆気なく心を奪われた私はもうその場でお店で働いてみようかと決めていたのかも知れない。




“なぁ、俺の店で働いてみろよ、お前ならてっぺん取れるし俺が見せてやる、てっぺんでしか見れない景色を”




小さな檻の中でしか生きていけなかった自分が、もしかしたら外の世界へ羽ばたいていけるのかもって心底思えたの。
それくらい堤さんの目は真剣だったし、熱い想いは嫌というほど受け取ってしまった。




でも顔出しNGでプロフィールも極力出さないという条件で働き出したのに。
No.1になった途端、手のひら返しだもん。




「その視線……ヤバいほど勃つな」




今はホテルの一室で押し倒されている途中。
堤さんって掴み所がない人。
オーダーメイドのハイブランドスーツを格好良く着こなし、色気のある口髭。




「神楽坂の姓を捨てて、リリカになりきれよ」と唇を重ねてきた。
拒む必要もなくて、また堤さんの纏う色気に為す術もないの。
舌の動きで翻弄されて焦らされて噎せるほどの愛撫で脚腰にきてしまう。




「堪らないな……仮面の下はこんな艶っぽい顔してんだもんな」




流されてはいけない。
奮い立たせるべく私は一線を引きその手を振り払う。




「神楽坂の姓は捨てない……捨てろと言うならリリカを捨てます」




目つきが変わったのを見逃さなかった。
鋭い視線は私を捕らえて放さない。




「変わらねぇ、その真っ直ぐな目で簡単に射抜くのな……お前くらいだぞ、俺を弄ぶの」




一度や二度ならず、箍が外れたように唇を貪る堤さんを押し返す。




「今日は本当に……展示会抜けて来ちゃったし」




今頃主役が居ないとザワついているかも知れない。
挨拶は済ませた後だけど。
一向に離れない唇を甘噛みされてまた舌で捩じ伏せられる。








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