蜜と獄 〜甘く壊して〜
第7章 【決断の時】
散々メディアでも取り上げられていて私たちに目が着いたんだとか。
関係者のトップが私のパフォーマンスを気に入って依頼してきた。
二つ返事で快諾し受ける事にした。
後日、新聞にもその記事が載ってしまいもう後戻りは出来ない。
披露する日まで3ヶ月間の猶予。
各々教室を開きながら夜と休日は全て時間を費やしあれこれと試行錯誤してデザイン案を纏めていく。
トップに立つ企業が集まるのだから……と私の出した案にエレンたちは快諾してくれた。
たくさん絵を書いてくれてひとつに絞っていく。
私も書道パフォーマンスといってもただ字を書くだけではない。
書道アートにも力を入れている。
ひとつの字と見せ掛けてたくさんの字が重なってひとつの字になっていたり、逆さにすると違う字に見えたり…と色んな手法でアートを楽しんでいた。
今回それも入れてほしいとの要望もあったのだ。
字は決まったところで、私にはもう一つやらなければならないと運命を感じている事がある。
掴みかけている今だからこそ、忘れない為に……自分が自分で居る為にしたい事。
エレンたちに打ち明けて良いお店を紹介してもらった。
脱いだ私の背中を見て
「本当に良いんですか」と再度聞かれた。
白い肌にはかなり目立つのだろう。
私はこの日、刺青を入れた。
背中ではなく、真ん中から腰あたり。
お尻に届きそうなギリギリのところまで“龍”を彫ってもらった。
ここなら見える場所ではないしドレスも着やすい。
カインみたいにグイグイと口説いてくる男にもコレを見せたら逃げてくれるかな。
もう誰も寄せ付けたくないの。
そして、どこかしら繋がっていたいという心の現れ。
自分がこんなに未練たらしいなんて思わなかった。
全部置いてきたなんてウソ。
自分を誤魔化す為の口合わせ。
あなたと同じ“龍”を刻んでみたかった。
「うっ……!」
半端じゃない痛みに耐えて耐えて耐えて。
刺青だらけの彫師にこの身を任せた。
出来上がりを見せて「綺麗」だと言ってくれたエレンたち。
カインは絶句してたけど「僕も入れる」と言い出したので全力で止めた。
「違うの、カイン……これは私の誓いでもあるの」
「誓い…?何の…?」