蜜と獄 〜甘く壊して〜
第2章 【快楽主義の射精術】
「お前の寝るベットは俺の家にしかない」
「またそうやって圧をかける……困ります」
「じゃあ、この苛立ちは何なんだ?」
「え?それ、私に聞きます?そんなの私が聞きたいですよ」
「あ〜クソっ!何なんだよ俺!さっきの接客に嫉妬してる…」
「えっ……?」
「俺は食ったことない……お前のケーキ」
ごめんなさい、プッと吹き出して笑ってしまった。
だって小学生みたいだから。
「それに何?家に帰らせろ?こんなモヤモヤしたまま俺を一人にするのかよ」
「延長しろって言われる前から今日はそのつもりだったんです……まさか全部見られてるとは思いませんでしたけど」
「お前、本当…仮面着けると人変わるのな?ある意味天職だよ」
「堤さんがそうさせたんじゃないですか……」
目を合わせればひとたまりもない。
あなたはいとも簡単に腰が砕けるようなキスをして私に媚薬を与える。
耐えきれなくなって私から離れた。
「紗衣の家が良いなら俺が泊まっても良いか?」
「ハァハァ……そうくると思ってました」
「ダメなんだよ……紗衣抱かないと調子狂う」なんてハンドルに顔埋めて言うことですか。
「あの、性欲処理ならそういうお店か他の女性と…」
手を握られると黙るしかない。
そういう空気の持って行き方は真似出来ないくらい長けている。
「紗衣じゃないと嫌だ」
多分、おそらく、私とはひとまわり以上離れているはずな大人がこういうこと言うんですね。
「先にシャワー浴びさせてください」
「ああ、わかった」
コロッと機嫌を直してハンドルを切る。
どうしてこうなってしまうのか。
深い溜め息を隣でついてもご機嫌な堤さんには聞こえていないみたいです。
自宅に連れ込むのは今日が初めてではない。
此処でも、死ぬほど抱かれた。
激しい夜を何度も過ごした。
初めて来た時は驚いてたっけ?
女の一人暮らしらしくない5LDKの一軒家で寝室と応接間以外はアトリエっぽく書道の作業部屋として使っている。
自宅兼オフィスみたいな造りだ。
勿論、一等地で一括払い。
賃貸は割に合わないので。