イラクサの棘
第15章 ライラックケーキ
翔side
ほろ酔いで頬が染まりはじめた
潤の顔が更につよい赤みががった色合いになる。
潤ませた瞳には
困惑より、恥じらいの滲む悦びが多く
見え隠れしている。
まだだ
真実の瞬間ではない
けど、潤の中で俺に対する気持ちの
変化は伝わってきてるから
もっと具現化したものに仕上げなきゃな。
その美しい瞳に
俺だけが映り続けるように
それまでのおまえの人生が錯覚だっんだと
おもえるくらい
運命的な出逢いを演出してやるよ。
潤、おまえを捕らえて離さない過去なんて
くだらないまぼろしのようなものだ
怯え、卑下、自虐
それらはどれも潤に相応しくない
羨望、魅惑、崇高、賞賛
おまえに相応しい世界へ
俺がその先へ連れて行ってやる
長野先輩は温厚で頼りになる人
食に関しての知識は、世界中の多くの
ものを知り尽くしている。
不躾で急遽でムリな願い事にも
わかった、任せとけ
ただし、かかる費用はおまえ持ちだぞ。
そう笑って快諾してくれた。
※ ※ ※
「マジで?ホントに用意できそうなんですか?」
「ああ、後輩にさ
スイーツ作りの上手い知り合いで
研究熱心なヤツがいるからそいつに
レシピか、どっか店とか知ってるか
聞いてみたんだ。
だからオリジナルじゃないけど
そいつの手作りジャムとレシピを
使わせてもらって作ってみるよ。」
箱に入れてくれと頼んでいた願いどおり
長野先輩の作ってくれた
ライラックケーキは
業務用の冷蔵庫内の箱の中で
しずかにその時を待っててくれた。
潤の為に用意したんだ
この中身は潤の瞳に1番先に映してやりたい。