イラクサの棘
第15章 ライラックケーキ
「これ……ライラックケーキ?」
「そ、約束してたケーキだよ。」
うまく言葉が出ない潤の唇が
わずかに震えていた。
「潤の為に長野先輩に作ってもらたんだ。
どう?気に入ってもらえそう?」
ニヤつく岡田先輩のカップに
コーヒーを注ぐ長野先輩も微笑んでくれてる。
どちらとも腐れ縁だけど、
2人とも頼りになるし、この2人との
関係性の絆には自信がある。
最初から頼っても良かったんだが
はなから当てにするのと、
手を差し伸べてもらえるのとでは雲泥の差だ。
「すごく…すっごくきれいな紫色。
こんなステキなケーキ初めてだよ。
これ、ほんとに俺の為…に?」
潤んだ水分が潤の目の縁から溢れて
一雫こぼれて頬をつたって落ちていく。
それはおそらく歓喜の一雫
「そうだよ、潤の為だよ。
リクエスト、ライラックケーキだったろ?」
「うんっ、うん。
でも、だけど、なんで?あんなの
ほんの冗談だし、俺が言ったこと
本気で探して…頼んでくれたの?」