イラクサの棘
第15章 ライラックケーキ
サプライズ演出は会心の出来だ。
潤の涙が見れたのは、長野先輩の作ってくれた
ライラックケーキの出来がすこぶる丁寧で
美しい芸術作品にも思える程だから。
「翔からの電話だと、
さすがにね、時間も限られたし、
オリジナルではないけどね。
上に飾ってるライラックの花の砂糖漬けと、
挟んであるライラックジャムは知り合いに
送ってもらったんだ。」
「ありがとうございます
すごいです、ほんとにキレイで
こんなのもったいなくて食べれないよ…」
「おいおい、
だったら俺がぜんぶ片付けてやろうか?
ホールくらい丸ごと食えるぞ!」
「これは芸術作品なんですよ?
ゴリラのエサじゃないんだからっ」
睨みつけながら俺の首に絞め技をかけにきた
岡田先輩から、立ち上がりソファから逃げる。
「こらこら、そこのバンビとゴリラっ
戯れあってないで、戻ってこーい。」
大笑いする潤がみせる屈託の微笑み
先輩にコソッと感謝の言葉を耳打ちすると
岡田先輩に肩を組まれて
そのまま窓の外のテラスへ連れ出された。
「いいか、翔。俺は今から酔い潰れてやる。
だから、おまえらは2人で戻るんだ。」
焦りは禁物だと思ってただけに
先輩の思わぬ発言に少し戸惑ってると
簡単に根拠に基づくものだと説明してくれた。
指相撲の際に
潤の手の性欲を誘発する秘孔を刺激して
握っていたそうだ。
それに今夜のフルコースメニューは
男性ホルモンを増幅させる程
精力抜群の料理だったらしくて
今夜その効果が現れる筈だと告げられる。
「翔、おまえが嵐を巻き起こしてやれよ。」
岡田先輩の中でこれからも
俺のイメージはずっとかわいいバンビの
ままなのかもしれない。
「ありがとうございます、岡田先輩。」
首を抱えられるように室内に戻ると
心配そうなに見つめてくる潤が立ち上がって
こっちに向かって来た。