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イラクサの棘

第18章 出発


潤side



「ほら、またダメだって
そんなに歯磨き粉つけちゃあ。」

「ふへ?」

「もったいないでしょ、少しの量でも
しっかり泡立つんだから。」

「ふぁっへさぁっ、んんがっ!」

「バカっちゃんと磨き終わってから
言い訳してよね、もう
ハイ、タオルで拭いて。」

「ほぉーーいぃ」

髪を乾かそうとしてる横で
ムギューって歯磨き粉をたっぷりめに
押し出してる翔さんに
口うるさく小言を言う。

毎回見つけたら、言っちゃうんだよなぁ
でも、あんなに出さなくても
キチンと研磨して磨けるだからさぁ。


ヒゲは剃った後みたいで
タオルで口元を拭き終わった翔さんが
くりくりの眼差しででいたずらっ子
みたいに笑いかけてくる。

「だってさ
たっぷりつけた方がキレイになるかなぁって
思うだろ?」

「それは勘違いだよっ
丁寧に時間をかけてこまめに磨いた方が…」

「今の潤、なんか俺の母親みたいだな?」


「はあ?
もう、俺は文句じゃなくて、合理性のある
事実を言ってるだけだよ。」

「ごもっともです。
これからは気をつけるからさ。」

「ほんとに?じゃあ約束だよ!」

「フハっ、やっぱりおふくろみてぇだ!」

「もう!翔さんっ!」

「ごめんって、剥れてもかわいいな、
やっぱり潤はおふくろとは違うよ!
それに、歯磨きをしっかりしといた方が
いつだって潤とキスできるだろ?
おふくろとはキスはしねえもんな。」


ドライヤーを最強モードにして
翔さん目掛けて
熱風を浴びせてやる
2人で戯れあいながら旅立つ支度をした。




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