イラクサの棘
第19章 診療所
「ごめんな、潤。疲れただろ?」
「ううん、平気。
でもちょっとびっくりしたかな。」
走り出す車内で労わるような優しい声で
俺の身体を気遣ってくれる。
イケメンだけど、ごく普通の青年だと思ってたし
先生に紹介されたときは、翔さんのことを
そんなに深く考えたりしなかった。
経歴だって
学歴だって
俺の全く知らない世界で生きてきた人。
どうして?なんで俺なんだろう…
まだまだ
知らない部分の翔さんが
見え隠れしてて
俺の中でイメージがちっとも固まらない。
「しばらく寝てろよ。
また熱が上がってくるぞ?」
「あ、うん、でもお薬が効いてるから
大丈夫、それよりも
俺、教えてほしいことがあるんだけど…」
なんで俺なのか?
本当に俺なんかでいいの?
俺のどこが?
真正面から訊ねてみたいけど
すこしだけこわい気もする。
でも
俺も翔さんのこともっと知りたい
そう思い始めてる自分が存在してるのも事実。
翔さんの太腿にそっと掌をのせて
なんで俺のことを好きになってくれたのか
その訳を訊ねてみることにした。