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イラクサの棘

第25章 踏み出す一歩


翔side


「あのね、翔さん
俺…ちょっと、聞きたいことがあるんだけど?」


立ち止まったまま、こっちに近づかない
潤、なにか思い詰めたような表情
さっき電話するまでは、無邪気な笑顔
だったから。
おそらく電話の相手とのやりとりで
なにか考えることが起きたんだろう。



「なんだ?俺はかまわないぞ。」

データーを保存して画面を閉じる。


俺たちはやっと恋人同士になれて
スタートラインに立った2人。
これからのことや、些細なことでも
こだわりが強くて、
自分だけで抱え込みがちな潤の気持ちを
しっかり汲み取ってやらないと。


ベッドの縁に座って
その横をポンポンと叩いて潤を隣に呼び寄せる。

素足の親指同士を擦り合わせるみたいな
仕草は、たぶんどうしようか悩んだ時の
潤の癖かもしれない。
ちゃんと覚えておかなきゃな。

肩口に頬を寄せて上目遣いで
俺の顔色を探るようにじっと見つめてくる。
言葉が出やすくなるように
肩を抱き寄せてやると
ようやく潤の潤んだ唇が言葉を紡ぎはじめる。


「えっとね、あのね翔さん
俺が、さっき電話してた相手とか、
話の内容とか
気になったり、訊ねたりしないの?」


やはりさっきの電話の相手だった。
昨夜は電源を切っておいて良かった。


「それは、潤のプライベートだろ?
潤の個人的な付き合いとか、友人関係には
敢えて詮索はしないかな?」

「そうなんだ…
翔さんって大人だね。
俺は…きっと
気になっていろいろ聞いちゃうと思うから…」
 



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