イラクサの棘
第25章 踏み出す一歩
男女の機微に疎い俺が
よく言われてきた台詞は鈍感さ。
恋愛論を読破したって簡単に身につくもんじゃ無い。
すこし淋しげな微笑みになる潤の為に
この性格も多少は克服しなきゃな。
「大人とかじゃなくてさ
潤が最初にちゃんと話してくれたからだよ。
酔っ払いの話を鵜呑みにするのかって
言われると、困るけどな。
前の恋愛で深く傷ついてる事や、
まだ全てを忘れられてない事とかさ。」
「そっか…そうだよね…
翔さんは、いつだって俺のこと
考えててくれてたもんね…」
「大げさだよ、けど内心
恋心より先に下心がバレないようにって
気持ちはあったかもな。」
「フフ、俺のほうが先に…
翔さんに下心感じちゃったもんね…」
「ああ、あの時はめちゃくちゃ嬉しかったよ。」
当初、潤はこの旅への不快感を露わにしていた。
旅行の日程に興味のある場所や
気になりそうなものを盛り込んで
プレゼンすると、興味を持ち始めた。
旅行には行く気持ちになってきてたが、
肝心の目的として
預かり物の受け渡し任務への戸惑いを伝えてきた。
すこしづつ俺への関心度と、信頼度を
見せてくるようになってくれてて
潤はいつだって
素直に自分を表現してくれていたんだ。
身体に起きた変化も、戸惑いも
きちんと言葉で伝えてくれてたから
いつだって俺は潤の為の最善を選択できた。