イラクサの棘
第4章 秘め事
雅紀side
智兄だぁーいだぁーい好き
恋しい相手に対して素直に好きだと口にだせる喜び。
義理の弟
その立場を利用して何度も伝えてきた想い
弱虫で泣き虫なのは
あの頃とちっとも変わってないんだ。
ねえ、智兄
俺の本心を知ったらキライになるかな?
それとも…
※ ※ ※
これでよしっと。」
「ただいまー
あ、智兄、招待状の準備できたんだ?」
「ああ、おかえり。
あきらぁ、ちゃんと手え洗えよ。」
「はーいとうちゃん」
「雅紀、代わりのお迎えありがとな。」
「なーに言ってんの。
晶は俺のかわいい甥っ子だよ。
あ、今日も晩飯うちで食べてく?」
「そうだなぁ、今夜は夜勤って言ってたし
買い出しも行ってねえんだよな」
「だろうと思った。
姉ちゃんってホント仕事人間だもんね
智兄ごめんね、」
姉ちゃんから妊娠を伝えられた時
絶望に引き攣った笑顔しか作れなかった。
幼なじみだった2人
きっかけは酔っ払った末の男女の関係
照れながら頭をかく智兄と腕を組んで並ぶ
勝ち誇ったような笑顔の姉ちゃんに
とうとう勝てなかったんだと思い知らされた。
家族ぐるみの付き合いで幼馴染の2人は
身内の俺じゃなくても
ごく普通のとてもお似合いなカップルに見えた。
事故で早逝した両親の代わりに
俺の面倒を見てくれてた姉ちゃんの幸せを
誰よりも望んでた筈なのに
ウェディングドレスを着た姉ちゃんの腰を
優しく抱き寄せる
タキシード姿の智兄を見た時
やっぱり涙が止まらなかった。
まるで2人が結ばれる事が
ごく自然のことだったかのような周囲の人達が
口にする祝いの言葉が痛みを伴って突き刺った。
俺が女だったら?
姉ちゃんよりも先に産まれてたら?
答えのない無意味な自問自答を
こっそり繰り返すだけ。