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イラクサの棘

第29章 こことは違う場所



潤が乗り込んだ車が左折で駐車場から
出ようとしていた。



「待ってくれーーー潤っ!!」


ガラス窓越しに見えた潤の小さな横顔は
とてもしあわせな微笑みを浮かべてる。


おまえの隣にいるのは誰だ?

潤、俺はずっとおまえからの連絡を待ってるのに
つながらない携帯
折り返しの着歴も、メールの返信も
携帯の画面ばかり眺めて潤の事を思いながら
悶々と過ごしてたのに

なのに潤
なんでおまえはここに居るの?
潤、おまえがしあわせそうに
微笑んでる相手はいったい誰なんだ??




走り去る車を追いかけてみても
追いつく筈もなく
急いでスマホを取り出して潤の番号を
タップしても、
ただ今電源が入っておりませんの
アナウンスがむなしく続くだけだった。



どんなに伸ばしても手に届かない。
潤、おまえは何処にいるんだ?
隣りいる奴はおまえのなんなんだ?

呆然と立ち尽くして見上げた空には
立ち込める雨雲が曇天の空模様を描きだしてる。


笑えるよな…
このタイミングで雨まで降ってきやがるのかよ



あまりの惨めさと情け無さに泣けてきた。





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