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イラクサの棘

第4章 秘め事



「智兄、味付けどうかな?」

「うん、バッチリ!
ナイショだけど雅紀の味のほうが美也子の
味付けより美味いぜ」
 
「ホント?クフフやったね。
やっと姉ちゃんに勝てるものができちゃった。」


「なーに言ってんだ。
雅紀には、いいところめちゃくちゃあるぞ。
料理だって、スイーツ作りだって、掃除も
洗濯も、家事全般なら俺ら3人の中じゃあ
雅紀がダントツだぜ。」

「フフ、ありがとうね智兄。
勉強でも、運動でも姉ちゃんに勝てたこと
なかったし、ほら俺ってチビだったし
グズで泣き虫で姉ちゃんと
智兄のあとばっか追いかけてたもんね。」

「ん、だったな、けど俺にとっては
なつっこいチビ雅紀が可愛くてホントの弟みたい
に思ってたんぜ。
今じゃすっかりデカくなったけど
相変わらずの泣き虫だもんな。」

「……なっちゃったね。」

「ん?」

「弟だよ、姉ちゃんと智兄が結婚しちゃって
ホントの弟になったんだもんね。」

「だな、これからもよろしく頼むな
かわいい弟よ。」


「うん、智兄ずっとずっとだぁーい好き。」

「ずるーーい、あきらもぉ」


「お、晶も、とうちゃんのこと好きかぁ?」

「うん、とうちゃんもかあちゃんも
だいすきぃ、
でもまーくんがいちばんやさしいから
だぁーいだぁーいだぁーいすき」

「じゃあ3人で仲良し抱っこだねー」


3人で抱きしめ合うと
まるで絵本の中のようなあたたかな温もりに包まれる。



天国の父ちゃんと母ちゃん、ごめんなさい

俺も姉ちゃんも
きっとそっちには行けません。

だけど、この罪を背負って生きていくから

この2人のしあわせは
俺が生命にかけても守り抜くからね。


智兄大好きだよ

他の誰かの代わりでもかまわない
ずっと智兄のそばに居られるなら

罪人の代償は
報われることのない夢魔の中で
生み出す背徳的な秘事


誰より愛しくて
なによりも大切で
永遠に手に入らない存在



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