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イラクサの棘

第30章 イトナミ

翔side


「…ん?」

「どうした?潤。」

「今、誰かに、呼ばれた…みたいだから…」

「そりゃ俺の心の叫びだよ
潤がだいすきだぁぁぁぁあってな!」

「もう、それは知っているもん。」

「なら良かった。
さあ、今夜の宿は気に入ってもらえるかな?」

「翔さんとなら…どこだっていいよ。
あ、でも、出来たら隣の部屋の声が
聞こえてこないのがいいかな。」

「そこは問題ないな。
しっかりクリアしてるぞ、もちろん
俺と、潤との初夜ってことも加味してだな
忘れられないような部屋を
予約してるからな。」

「初夜って…もう、バカっ」

「おっと、ゴムもたくさん購入しとかないとな。
潤の負担は軽減してやらないと。」

「別に…たくさんじゃなくても
中で出しても、ちゃんとすぐに掻き出したら
…って、俺…何言ってん、もう知らない!」

「アハハハ、じゃあ生でした時は
俺がちゃんと責任持って潤の中を
キレイにしてやるからな。」

耳元まで真っ赤な潤
俺の左太腿をつねってきた指先を
包み込むように握り締めると
遠慮気味に上目遣いで俺を見つめながら
肩に頭を寄せてくる仕草。
込み上げる愛しさに、信号で停車した
ときに額に唇を落としてやる。


バックミラーに映った人物は
明らかに俺らの車を追いかけてきてた。
眼鏡のヒビのおかげで
その事には全く気づかなかった潤。

すぐに狂いだすシナリオの修正は
細心の注意を払ってても
横路に逸れようとしがちで厄介だ。
走り去る車をあきらめて立ち尽くしてる
男が1人、ミラーから小さく消えていった。



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