イラクサの棘
第30章 イトナミ
※ ※ ※
馴染みの寿司屋の大将の
横に立ってカウンターの俺らに
見事な包丁捌きで
刺身や寿司を振る舞ってくれた松岡先輩。
「また、こっち来る時があれば声かけろよ。
おめえは案外薄情なところがあるからな。
アイツとは?まだ会ってないのか?」
潤がトイレに立った時
すこしだけ込み入った話になりかけた。
アイツ
そう俺のシナリオにいつのまにか
違うストーリーを挟んでくる男。
天才外科医で陰キャでゲームおたく
そのくせ抜群に頭のきれる男
そいつが二宮和也。
「そうですね、またタイミングが合えばって
話をしただけで。
別に決まった約束はしてませんね。」
「おまえらはなぁ
似たもん同士のクセに、お互いの
領域内には立ち入らせないからなぁ
まあけど、俺も城島さんもアイツには
いろいろお世話になってるしな。」
「じゃあ松岡先輩、俺らそろそろ行きますね。」
「そうだったな。
今夜はおめえらの2人の合体記念日に
なるんだもんな。
翔、おめえにすっぽんでも捌いてやろうか?」
「必要ありませんって!
俺はいつだって準備万端ですから!」
「なにが?準備万端なの?」
手洗いから戻って来た潤が
微笑みながら首を傾げて訊ねてくる。