イラクサの棘
第33章 シャボン玉
「とうちゃん、みてみてぇー
ほらぁシャボン玉だよぉー」
「おま、こら晶っ部屋の中だそ!」
「いいですよ、
シャボン玉はすぐに割れちゃいますから
きれいだね。晶くん、とっても上手だねぇ」
風間先生が
晩御飯には出前を取るからと言って
差し出してくれるメニュー。
和食、寿司、洋食、ファミレス
晶が好きなファミレスのメニューがあった。
いつも注文するメニューを
選んでやりながら
俺はある事に気がついた
もしかして俺、雅紀の好物って知らねぇかも。
いつもなんだって作ってくれる雅紀。
俺が好きなもの。
晶の好物、美也子が食べたいって物。
雅紀はいつだって俺ら家族の
食べたいものを作ってくれてたのに
俺はあいつの好物を知らない。
俺はね、なんでも食べれるからね
いいのいいの。大丈夫、大丈夫。
ごめんな、雅紀
いまさらながらに気がついた
俺ってヤツは
自分勝手でどこまでもクズなヤツだって
晶かゆっくりと吹き出した
おおきなシャボン玉が
ゆらゆらとまあるい玉が電球の灯りに
きらきらと揺らめきながらゆっくり漂って
浮かび上がろうとして
呆気なく割れて消えてしまう。