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イラクサの棘

第39章 思惑




ホントはあの時
おまえに預けるつもりだったんだ。


だけど
馬鹿で臆病な俺は…
潤との未来をあきらめてしまった。


親父の入院、闘病生活、家業の経営不振に借金問題
一つ一つを精査して時間をかけて
それらの問題に正面から取り組んでおけば
潤を手放さずにすんだのかもしれない。
全てを失ってから気付く自分自身の愚かしさ。


けど、あの頃から俺はちっとも変わってない
嫌なことには
目を背けてすぐ酒に逃げようとする。


ごめん
ごめんな、潤



スケッチブックの最初のページの潤
出会った頃の高校生の頃
まだほんの少年だった頃の潤がいる。

それ以上は捲ることができない。



潤、今どこでなにしてる?


この間の声はとても落ち着いていた。
イライラもしてなくて
ちゃんと俺の呼び掛けに応えてくれた。

なあ、潤
おまえのそばに居るのは誰なんだ?
おまえと一緒に旅してるって誰だ?

繊細で、けっこう気難しくて、細かいことにまで
こだわりの強い潤と
ずっと一緒に旅行ができるヤツって
いったいどんな奴なんだ?






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