イラクサの棘
第5章 Journey
翔さんの指先を注視してると
記憶の引き出しがまた開いてしまう。
智とはじめて結ばれてた日
優しく塗り込めてたっぷり時間をかけて
指先でゆっくりと受け入れる後孔を解してくれた。
やがて付き合いが深くなり
同棲を始めて半年も
たたないくらいだったかな?
いや、差し出される人差し指を
物欲しげに自分から舐め出した頃から…?
ローションで自分で解すように指示されたり
ゴムの装着も無く
智の欲望を何度も中出しされて
翌日腹痛で起きれなくなることもあった。
馬鹿か、俺は!!
翔さんに対して失礼過ぎるだろっ!
俺の火傷を気遣って薬を塗り込めてくれてる
翔さんの仕草に
過去の忌々しいみだらな想い出を蘇らせるなんて。
「よしこれで、大丈夫。
念のため今夜は風呂はやめとけよ。
温めのシャワーだけにしときな。」
「うん、シャワーは朝に浴びてきてるし
翔さんこそ、ゆっくり風呂入ってね。」
「うーん、俺も朝風呂はいってきたし。」
コンコン
「はーい」
車掌さんと翔さんの立ち話
漏れ聞こえる内容だと、どうやら
ふらついて倒れたご婦人のご主人から
お詫びの品を預かってるらしい。
ワゴンで運ばれて
テーブルの上に並べられるものは年代物のワインの
ボトルが2本とさっき食べ損ねたスイーツよりも
もっと品数が豊富で
アフタヌーンティーのプレートに
乗せられたプチケーキの数々に
ドライアイスの皿には盛り合わせのアイスクリーム。
「お詫びのしるしだとよ。
一応名刺も渡されてた、何かあれば
ご連絡くださいって」
「スゴい…あ、さっきのタルトだ。
フフ、食べたかったヤツなんだ。
めちゃくちゃうれしい」
「ちなみにワインはこの列車内で最高級だそうだ。」
特製の軟骨を塗ってもらったおかげか
痛みもひきつりも感じることもなく
ベッドからソファーへ移動する。
サロンカーには行けなかったけど、
翔さんと2人この個室でゆっくりとくつろぎながら
差し入れられたスイーツとワインで
寝台列車内での二次会がはじまった。