イラクサの棘
第6章 ユメウツツ
久しぶりに見る夢
智と2人きり船の上にいた
おだやか波の揺れ
満点の星空
釣り竿を垂らす智に
寄り添いながら並んで座ってる
上機嫌なときにでる智の鼻唄は
聞き覚えのあるフレーズなんだけど
タイトルはわからない
「竿が落ちちゃう…んん」
「やっぱ魚より、潤が喰いたいや。」
濃厚なキスの後
立ち上がりゆるめのスウェットの
ひもを解いて智の分身を俺の目の前に取り出す。
「潤、ほら咥えたいだろ?」
「……ここで?っやだよ。」
抗ってみせても、そんなのは智に通用しない
優しく頬を撫でる指先
おだやかに凪いだ夜の海
水音を響かせてるのは俺の唇
「んん…はぁ…んふ……ぁ…んぁ…」
「潤の一本釣りだな。
あぁ、すっげえ、気持ちいい、
潤、おまえフェラもマジで上手くなったよな」
何処ででも智の欲望のままに受け止め
させられていた。
あの頃の俺は智の言葉に逆らうことはできなかった
毎朝目覚めると布団の中で掌を掴まれて
智の下腹部へと導かれたんだ。
智のぬくもりに包まれて
智の生み出す熱量に翻弄されながら
幸福に満ちた気怠い目覚めを
数えられないくらい迎えていた
待ち焦がれて
待ち続けた先の裏切り
その先の絶望までの距離の短さを
思い知らされたから
曖昧に揺れる笑顔は
海に漂って消えていく朝靄のように
ただ脳裏にうっすらと残像だけが残る。
また夢を見てる、起きなきゃ
重苦しい瞼の裏側に集まり始めた潤み
肩口が震えだしそうになったその時
抱き寄せてくれる温もり
手のひらがゆっくりと
肩口をさすって温かさを生み出してくれる。
これは
誰のぬくもり?
まだ夢のつづき?
あたたかな胸元に顔をうずめるように
ふたたびまどろみの中に意識を手放していった。