イラクサの棘
第7章 記念写真
潤side
「すっごいね、ここが日本の最北端?」
「おお、やっと着いたぜ。
ちゃんと上着着ろよ、風強いからな。」
「フフ、翔さんって
ホント世話焼きで母親みたいだね。」
「ちげえだろ?
そこは、やさしいお兄さんだろ?」
「アハハ、じゃあやさしいおじさんだね。
車の中でも、おじさんみたいなダジャレに
古いギャグばっかだったじゃん。」
「おまえなぁ、ってか潤、やっぱ寒くね?」
駐車場から最北端のモニュメントまで
ランニングシューズに履き替えて軽めに走っていく。
午前中ずっと運転してくれてた翔さんは
身体を伸ばしたり、屈伸させたりしながら
ゆっくりと歩いてる。
5日目の昼過ぎ
最北端のモニュメント前で観光地記念の撮影を
勧められても、無視してたのに
面白がった翔さんがせっかくの記念だからって
撮影してもらう事になった。
さっき購入した最北端到着証明書を手にして
自慢げなピースサインの翔さん
その横ですこしスカーフを深くする。
「右のお客さん、男前の顔隠れてますよ?」
「お、潤なにやってんだよ、ほら
ちゃんとイケメンの顔だせよ。」
「え、ちょっと、やだよっ」
「ほら、笑えよ。ハイチーズっ」
ガシッと肩まで組まれての記念撮影。
おどろいた顔のまま写ってるのに
撮り直しもせずにこのままでって
もう最悪じゃん。
「もう、知らないっ!
俺、むこうで土産見てくるからね!」
お互い自分のスマホで撮る写真は
風景やら、食べ物やらで
それぞれが別々に撮影してて
2人で写る撮影はまだしたことがなかった。
せっかく翔さんと
初めての記念の撮影だったのに
あんな顔になっちゃうなんて。
最初から素直に顔出しとけばよかったな
気まずさとすこしの後悔。