イラクサの棘
第7章 記念写真
「潤、これもめちゃくちゃ美味ぇぞ!」
「え?ああ!それはさっき
岡田先輩に手土産で買ったヤツでしょ?
なんで先に翔さんが食べちゃうかな!」
「だってさぁ、
なんか美味そうだったからさ。
じゃあ、岡田先輩もついでにどーぞ。」
頬を膨らませながらソファーに座り
チーズケーキの皿を持つ。
フォークで切り分けた一欠片を口に含ませると、
芳醇に広がる香りとしっとりとした舌触りに
瞳を見開いて同意してくる。
「ホントだ!すっげえまったりしてる
けど、しつこくない甘さだし
うん、これはめちゃ美味しいね、翔さん。」
「だろ?マジで美味えよな!」
期間なんて必要じゃない
どれくらい付き合ってきたのか
重ねた時間が重要だとするなら
それは
この先の未来で築き上げればいいだけのことだ。
潤の人生の中、その他大勢の1人
良好な関係性の人物に成り下がるつもりはない。
「ん?どしたの?」
「いいや、どうもしないよ。」
潤を真っ直ぐに見つめてると
目が合い、すこし首を傾げて訊ねてくる。
「またまた2人で見つめ合いかよ。
お、そうだ、風呂場も観てくれないか?
露天風呂をつい最近作ったんだが
これもなかなかの自信作でな。」
岡田先輩の言葉に顔を見合わせてて
2人同時に立ち上がる。
また別の小さな歯車がゆっくりと動き始めた。