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イラクサの棘

第10章 チカヅケナイ

潤side


深呼吸を何度も繰り返す。
ゆったりと深く腹式呼吸も取り入れながら
ベッドの上で柔軟をしてみたり。  


「ふぅーよかったぁ
おさまってきたみたい。」

風呂場からあんな立ち去り方をした事に
後悔はあったけど
身体の異変がそれどころじゃなかったから。



気付かれてないよね?

下着の中で静かに在るべき位置でおさまって
くれてる、俺の分身は
さっきまでいた風呂場で
あろうことか、湯船の中で立ち上がりかけていた。

なんで??
旅先のこんなタイミングで!

日常生活から解放されたおかげ?
今回の旅では新鮮で美味い食べ物を食べてるせい?
温泉効果とかもあったりするの?
とにかく温泉宿でリラックスできる
くつろぎと癒やしの空間を堪能させて
もらってるおかげなのかもしれない。


そう考えると
健康体になりつつあることに
むしろ感謝しなきゃいけないのに

でも、さっきの温泉の中で
翔さんの裸体を意識してこうなったとしたのなら



「どうしよう、翔さんだなんて…はぁー」


そりゃイケメンの男前で
本人だってモテる自覚は有るって言ってたし
さわやかなあの笑顔には
こっちもつられて自然に笑顔になるんだ。
豊かな表情に、時折り見せる思慮深い横顔
警戒心を抱いたのは初めて出会った時
ほんの僅かだけ。


旅が始まる前には信頼出来る人だと感じてたし、
旅の始まりから今まで
2人きりでもずっと自然体で居られた。

気づいたら助手席でうっかり寝入ってたり
ぼんやり景色を眺めてたりしても
その間俺のことを放っておいてくれる。

たまに翔さんの歌う流行遅れの鼻唄が
とても心地良くて
つい2人でハミングなんて事もあるから。

翔さんと過ごす空間が
当たり前に心地良く感じていた。



いや、でも、だって別に男なんだし、
身体が健全になってきてるんだとしたら
むしろ喜ばしいことだって言えるんだけど…




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