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イラクサの棘

第10章 チカヅケナイ



俺の過去の恋愛遍歴は智だけ

彼に組み敷かれて知った
受け身である事の負担、重荷
男に抱かれて愛し合える喜び

封印した過去の自分
愛欲に溺れ、爛れたような熱を交わし合い
泣き叫びながら縋り付き
裏切りられ、捨てられた。

全て忘れ去りたいあの日々

狂おしいほど持て余した欲望は
俺自身から垂れ流すほどだったようで
捨てられて別れた後
誘われては誰とでも
一夜限りの関係を持とうと自暴自棄になってた。

但し、抱かれても、
俺自身は勃ちあがることも
吐精することすらできなくて
もしかして女ならって試してみたんだ。

ある店で誘ってきた女
その女の顔なんて覚えてもいないのに
安っぽいホテルの一室で
浴びせられた罵声だけは耳に残ってる。
男として完全に打ちのめされた台詞。

サークルで知り合った奴に誘われて
参加した地下の会員制のクラブイベント。
知らずに飲まされた怪しげな薬のせいで
救急車で病院に運ばれた挙句
そのまま緊急入院
大学をしばらく休学する羽目になった。

病院のベッドの上で
不能になってる自分自身に気が付いたけど
どうにかしなくちゃなんて思えなくて
自宅療養の許可がもらえて退院してすぐに
処方されてた睡眠薬を大量に服用して
俺は、自殺未遂を図った。


 
コンコン 

「はい!」


控えめなノックの音
翔さんだ、布団に潜ってから返事をする。

「潤、ごめん寝てたか?」

「…ううん、すこし眠たくなったから
おかえりなさい。」

「そっか、大丈夫か?」

「…うん」

うん、不自然じゃないよね?
布団に潜って寝るのもいつものことだし
俺のベッドに腰を下ろす翔さんが
ぽんぽんと優しい仕草で頭を撫でてくれる。

「さっきは、ごめんな。
おまえのビール横取りして。」

すっかり忘れてたくらいの事なのに
優しい口調で謝ってくれる。

「…………ううん、」




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