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イラクサの棘

第11章 牧場の朝

翔side


「おわっ、やべえ寝坊したっ!
起きろ潤っ!!…あれ?」

いつもならはだけた布団を手探りで
探しながら、寒気で目覚めていたのに
今朝はほっこりしたぬくもりに包まれて
つい寝過ごしてしまった。

飛び起きて潤のベッドを見ると
きちんと畳まれてる毛布に布団

テーブルの上にはメモ書き

あくびと一緒に背伸びをして
カーテンを開けてると、作業着を着て
長靴を履いた潤の姿。

「どんな格好してても似合っちまうヤツだな。」

思い詰めた憂い顔
不安を内包させてる瞳の奥
寝入ってしまった後
夢の中で零れ落ちるしずかな涙

どれも胸をひどく掻き乱される潤の表情

どうにかしてやりたくても
俺にはどうする事もできない

そっと寝顔を撫でてやりながら
まだ見ぬ
潤の忘れ難い相手に
思いを募らせずにはいられない。

なぜこんな目に合わせたのか
こんなにも苦しんでる潤のことを
知っているのか。

正論をかざした所で
これは単なる嫉妬心でしかない。


乗り越えさせてみせる
所願は必ず成就させてやる。

大きく深呼吸
決意を日々強めて
つよく己自身に念じている。


「さあて、俺も着替えないと、
ゴリラ先輩に怒鳴られちまうな。」

スマホのバイブが振動する。

もう届いたのか?
昨日出した葉書は速達だったが
さすがこんな朝一の配達はないだろう。




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