トライアングルパートナー
第1章 二人
金曜日午後7時、今田進一は自宅の玄関のドアを開けて入る。外から見れば、窓に明かりはないから誰もいないのは分かっていた。
「ただいまー」
声を上げたものの当然、家の中から返事はない。彼は部屋の照明スイッチを入れた。
家族は妻との二人暮らし。
二人は東京のk区役所に入所した。妻は京王大学を卒業し、彼は東響大学を卒業した。就職氷河期時代と言われる中、登用試験に合格したのであるから二人とも優秀である。
しかし、第一印象の良さはその人を際立たせる。彼女は均整のとれた体とキリッと引き締まった顔立ちであり、周囲の目を引いた。一方、彼はフツメンと言われる容姿だったがために、残念ながら手堅い部署への配属となった。そういう凸凹の二人が交際することになったのであるから周囲は注目した。
彼女の熱烈な求愛に、彼が最も戸惑った。なぜなら彼は童貞だった。まったく持てない男だった。
不釣り合いな二人の交際に周囲は疑念を抱いた。彼女は彼に何か弱みを握られているのでは? 彼女は彼から脅迫されているのでは? といううわさ話から、彼のはきっとすごいんだよ、とか、床上手なんだよ、とか、いろいろな下世話なうわさから、二人の性格の良さにひかれ合ったんだろう、という暖かな賛同や称賛が湧き、注目されていく。しかし、多くのものが不毛の愛と思っていた。
ところが、二人の行動は幸せを周囲に注いだ。幸せ光線を浴びたのであるから周囲の人間は、交際を絶賛し、ファンクラブまで誕生した。このまま、未来永ごう、いつまでも、永く続いてほしい、と周囲は願った。それでも、二人の関係は破局すると思っていた。
ところが、二人が結婚するということになったから、周囲の人たちは驚ろいた。婚約が決まると、さらに、幸せなオーラを周囲に浴びせた。二人のオーラをあやかろうという人々が増え、ファンクラブは会員登録数を激増させ組織的になっていった。
朝、幸せそうに二人で肩を寄せて出勤する風景に誰もが立ち止まって幸せオーラを吸収した。その様子を撮影された二人のスナップはファンクラブのSNSに掲載された。彼女の幸せがいっぱいの笑顔は、ネットを通しさらに幸せなオーラを拡散させた。もう、彼女は天女、女神、観音と言っても過言ではない。
「ただいまー」
声を上げたものの当然、家の中から返事はない。彼は部屋の照明スイッチを入れた。
家族は妻との二人暮らし。
二人は東京のk区役所に入所した。妻は京王大学を卒業し、彼は東響大学を卒業した。就職氷河期時代と言われる中、登用試験に合格したのであるから二人とも優秀である。
しかし、第一印象の良さはその人を際立たせる。彼女は均整のとれた体とキリッと引き締まった顔立ちであり、周囲の目を引いた。一方、彼はフツメンと言われる容姿だったがために、残念ながら手堅い部署への配属となった。そういう凸凹の二人が交際することになったのであるから周囲は注目した。
彼女の熱烈な求愛に、彼が最も戸惑った。なぜなら彼は童貞だった。まったく持てない男だった。
不釣り合いな二人の交際に周囲は疑念を抱いた。彼女は彼に何か弱みを握られているのでは? 彼女は彼から脅迫されているのでは? といううわさ話から、彼のはきっとすごいんだよ、とか、床上手なんだよ、とか、いろいろな下世話なうわさから、二人の性格の良さにひかれ合ったんだろう、という暖かな賛同や称賛が湧き、注目されていく。しかし、多くのものが不毛の愛と思っていた。
ところが、二人の行動は幸せを周囲に注いだ。幸せ光線を浴びたのであるから周囲の人間は、交際を絶賛し、ファンクラブまで誕生した。このまま、未来永ごう、いつまでも、永く続いてほしい、と周囲は願った。それでも、二人の関係は破局すると思っていた。
ところが、二人が結婚するということになったから、周囲の人たちは驚ろいた。婚約が決まると、さらに、幸せなオーラを周囲に浴びせた。二人のオーラをあやかろうという人々が増え、ファンクラブは会員登録数を激増させ組織的になっていった。
朝、幸せそうに二人で肩を寄せて出勤する風景に誰もが立ち止まって幸せオーラを吸収した。その様子を撮影された二人のスナップはファンクラブのSNSに掲載された。彼女の幸せがいっぱいの笑顔は、ネットを通しさらに幸せなオーラを拡散させた。もう、彼女は天女、女神、観音と言っても過言ではない。