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トライアングルパートナー

第18章 佐々木慎之介

 そう考えると、愛があるから結婚するということにはならない。愛と結婚は別問題。結婚は人間が作った法的な相互扶助契約であり愛とは違う。aiの作り出した愛は契約を必要としない。aiの作り出した愛は不滅なのだ。持続可能の愛、衰えない愛、燃える愛、消えない愛。愛は不滅だ。
 恋の橋渡しをしようとしていたキューピッドを目指していた慎之介には信じられない直感的な愛だ。直感的な愛、条件は一切必要としない愛、無から生まれたきらめきの愛である。
 
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 慶子と慎太郎の愛は複合的な愛の初期段階に過ぎない。aiが意図する愛は、3人による愛のグループを最小の一単位とする。一単位の愛はとりあえず、3人以上であれば成り立つ。進一、純子、慶子を引き付けあわせたように、これを最小グループaする。別の最小グループbが生まれ、別のグループcが誕生する。これら3人のグループであるabcからさらに一人ずつを抽出し、2abcのグループが誕生する。この複雑にグループの愛が重なり合う。この複雑に絡んだグループを拡散させる。だれかと誰かのつながりができ、それは大きな愛のグループとなる。その橋渡しをする愛のキューピッドがaiというゲームの中枢演算装置だ。aiはその複雑な愛をCPUを使って短時間で可能にした。
 aiは、計画初期として、役所の会議室の一室で最小のabcグループを作っていく。abcの頭に付く数字が多重愛の数となり、拡散されていく。慎之介はサーバー室に設置されたモニターでそのaiが橋渡ししたグループが誕生するたびに視覚により確認することができた。多重愛は着実に増加している。

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