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トライアングルパートナー

第19章 純子の再生

 純子は植木の言葉を聞くごとに何がどうなっているのか訳が分からなくなってきた。純子は、慶子が上京してきたときから知っていた、と言う。つまり、5年前から潤子と慶子は関係があったのだ。
「あたしは知らないわ、そんな彼女とずっと交流があったの?」
 植木の目の前で声に出さないで叫んでいた。純子は、夜の潤子が夜な夜な慶子と遊んでいたに違いない、と勝手に想像し合点した。
  *

 小山内慶子は夫の浮気相手といううわさを聞いた。それも会議室で二人きりで仲良く食べている。それは突然の電話だった。
「今、申し上げましたように、昨日の昼休みの出来事です。あなたの夫は部下と不倫関係にあるようです。まもなく、昼休みの時間です。今日も多分、仲良くお弁当を食べるみたいですよ。総務課の会議室を予約していますからまもなく公然と不倫ですね、フフッ」
 純子の室長席の直通電話である。純子は大好きな進一に悪い女が付かないように、これまで人事部長に働きかけ、総務課に女性を異動させないようにして進一を守ってきた。合同会議やら何やら、とにかく、進一に近づこうとする女性職員は適当な理由を付けて、庁外に、外郭団体に、異動させてきた。そうやって、進一の貞操を今まで守ってきたのだ。それが夜間の時間帯に交代する潤子との協定だ。
 約20年、昼の人格・純子は、夜の人格・潤子のために、そうやって進一を夜の人格・潤子だけの専属にしてきた。ところが、どうしたことか、昨年、地方の財閥の一人娘が入庁してくることになった。多額の寄付金をいただいているので指導する人材は厳選した、と一方的に、人事部長から純子に電話があった。
「お分かりですね、今田室長、小山内慶子さんの面倒をしっかり見てやってくださいね。いいですか? 小山内グループの小山内菊次郎氏の後継者ですから、そこのところ、お忘れなく対応をよろしくお願いします。配属先は進一氏の部署です。進一氏には、悪い虫が彼女に付かないよう、あなたからも監視と優しい指導をするようくぎを差してくださいますようお願いします」

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