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トライアングルパートナー

第20章 落ち着かない残業

 去年、役所に採用され、その原因が分かったのです。純子さまは昼の時間に生きる純子様と、夜の時間に生きる潤子様がいらしたのです。だから、役所に入ったとき、廊下でお会いした純子さまがわたしを無視していることに憤りを感じました。無視する理由が分かりましたら、あたし、純子さまの愛する係長がいつの間にか好きになっていました…… それが今日の昼休みにはっきりしました。あたしの求めていたもの、あの時間をもっと増やしたいと心から願いました……」
 進一は慶子の言葉に動揺した。
「あああ…… 小山内さん…… なんてことだ、そんないけないよ、いけない……」
 そう言った進一は、席を立ち上がると慶子の座っている席に少しずつ近づいていった。慶子は席を立ち上がって、近づく進一に体を向けた。進一は周囲を見回すと、何人かの職員がまだ残業をしているのが見えた。
「純子さまは会議室を出るとき、全然、怒っていらっしゃらなかったから…… 係長も嫌でなければ、このまま、この関係を続けられませんか?」
「そうだったよね? 怒ってなかったね…… ぼくも覚えているよ……  うん…… でもねぇ……」
 進一が照れくさそうに頭をかいた姿を見た慶子はくすっと笑った。
「嫌だわ、係長ったら、昼休み、あんなことをあたしにさせたあとではありませんか?」
「えぇっ? あんなこと? あれ、って、やっぱり、してたの?」
 進一は慶子の顔が真っ赤になったのを見て心臓が爆発しそうに速くなった。
「あれはヒトメボレが作ったリア・ラブゲームの中でのことではなかったの?」
 慶子はうれしそうに首を元気よく左右に振った。左右の髪が広がって横になびいた。進一は慶子の動作すら、今起きているそれすら、リアラブゲームの中でのことで、現実ではないような気がした。

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