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第22章 純子の統合

 純子の言葉に植木は首をかしげた。ちょうど、そのとき、慶子が車いすを押してやってきた。慶子の顔は真っ赤になってあわてている様子だった。
「純子さま、お体は大丈夫ですか?」
「今田は?」
「すみません、今晩、住民説明会があるので、係長が立ち会わないとまずいことになりそうな案件なので、純子さまの様態は逐一報告するということでわたしだけが参りました」
「ふーん、そうなの? 随分、あなた、彼から信頼されてるのね? でも、ありがとう」
 慶子は純子の態度に驚いたようで、首を左右に振った。植木が手をたたいた。
「はい、さぁー、急いで参りましょう」
 植木はそう言うと、純子を車いすに座らせ、押した。純子、慶子、植木の3人で区内の賛成会病院に慶子の運転する車で向かった。医師の診察、問診後の見立てでは一過性の過労という診断で、ビタミン剤の点滴で回復するはずと言う。別室で処置を受けたら帰宅していい、と言われた。3人は診察室を出て、待合室のソファーに座った。植木が明るい声を上げた。
「ちょっと安心しました。のどが渇きませんか、飲み物を買って参ります」
 終始心配そうな顔をしていた植木が安堵したのか、いつもの笑顔に戻ったのを見た純子も、植木の顔を見て安心した。彼は売店に行く、と言って歩いていった。純子は隣に座る慶子を見つめた。
「ねえ? あなたとは先日の昼休みに会ったのが初めてと思っていたけど、さっきの植木さんの話からすると…… この前、植木さんとあたしが行った夕食の席にも、あなたは同席していたの?」
 慶子は純子の質問に戸惑った様子を見せたあと、悲しそうな顔をして言った。
「はい、以前から純子さまとは夜にならないとお会いできないので寂しく思っていました。去年、ここへ入所してどうして純子さまがあたしを無視するのか分からず戸惑いました。でも、その理由が分かってきました。昼間の純子さまって、あたしの記憶がないんですよね?」
 純子は慶子の話している内容が理解できなかった。

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