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第26章 慶子の上京

 幸せを感じるために脳と体を全力で使い、全力を出し切り疲れた脳と体を睡眠により回復させる。すがすがしい目覚めと同時に爽快感が脳と体が感じる。
「これが幸せだ」
 懇親会の参加者は感極まり叫ぶ。
 こうして、世界を愛で満たす今田純子を応援するグループは、自らが体験することでやがて愛で世界を満たせる、と確信する。
 これが夜の人格・今田潤子が提唱する愛のリングの骨格だ。大学を取り込んだ教育カリキュラムは、世界を愛で満たすための初期段階の奉仕活動だ。愛のない世界は不毛な世界。そんな世界は愛で塗りつぶし、愛に染める。やがて、愛は世界を救い、みんなが幸せを享受する。しかし、これらの説明はパネルにはない。
 パネルを見終えた慶子は、名門大学を後ろ盾に活躍する今田純子という人物に会いたい、純子さまのお顔を見たい、と展示室に入って数分しか経っていないのに、今田純子が女神さまに思えてきた。慶子は知らないうちに今田純子によって洗脳された。たった数分で。それもそのはず、なんとこのパネルは今田純子が小山内慶子をグループに取り込むため特別に準備した仮部室だった。今田潤子は小山内慶子に一目ぼれしてしまっていた。純子は夫・進一と同じくらい慶子を好きになっていた。
 もちろん、展示パネルで公表していない夜の人格・潤子の考える秘密の教育カリキュラムは夜の人格・潤子により取り込まれた慶子は個人指導を手取り足取り受けていくことになる。これも既に、夜の人格・潤子によって計画されていた。
 このサークルが公表している奉仕活動は、昼の人格・今田純子ファンクラブの活動を主力にしている。今田純子には陰と陽の人格があった。昼は陽の人格、夜は陰の人格が分担し活動していたが、最終目標は「世界を愛で変える」ことである。行動手段に違いはあっても目標は同じだ。
 夜の人格・潤子が推進する奉仕活動は、昼の人格・純子に秘密にして進められていた。調整役の人格・順子はどちらかと言えば夜の人格・潤子側の人格だった。調整役の順子は、どちらかに加担していたほうが、昼、夜の人格が分離しながら生きていく上で都合良かった。

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