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トライアングルパートナー

第29章 慶子の悩み

「あたしって、なんで、愛する慎之介さんがいるのに係長を愛してしまったのかしら、あたしは二人も愛せる浮気な女だったの? あたしって最低の女だわ? あたし、あなたも愛しているの分かるの…… なんなの?」
 慶子は慎之介に苦しさを訴えた。その慶子の涙に慎之介はただただ困った。慎之介は今まで恋の橋渡しをして感謝されることはあっても泣かれることはなかった。彼女は複数の人を愛してしまう感情に戸惑っているのだ。日本では運命の人はたった一人しかいない、というルールを植え付けられてきた。それが円満な人間関係を築くため人間界が作り出した法律だ。人を愛することにルールはいらない。好きになったもの勝ちだ。愛の力こそがおのれのルールだ。
「なんとかしなければ、将来、慶子のような罪悪感が持つものが増えるだろう」
 多情愛を推進する慎之介はスマホ・ヒトメボレを普及させるだけでなく、アフター・ケアという新たな活動が必要と思った。
「慎之介、あたしの心が壊れちゃったみたいなの…… 今、進一と愛し合うようになったと報告しているのに、あなたとも愛し合いたくなってきたの…… もう、あなたを愛したくて我慢できないわ」
 慶子はそう言うと、慎之介の頬を両手ではさみ動けなくするとキスした。慎之介は目を丸くした。慶子は唇を重ねたまま両手を背中に回した。そのまま、慎之介は入ってきたドアに押し付けられるように後退りしていった。そのまま、慶子はドンと音を立ててドアを背にしたままの慎之介にキスを続けた。
「店長ぅー 大丈夫ですかぁ?」
 先程の女店員がドアをドンドンたたきながら大きな声を出している。すると、慶子が唇を外し声を出した。
「大丈夫じゃないわぁー あたしにも分からないわ。あたしの何かが壊れたみたいなのよぉー」
 慶子は天井に向かって大きな叫び声を上げた。それから直ぐにかがむと、慎之介のベルトに両手を掛け素早くズボンを引き下ろした。
「お願い、動かないでね……」
 慎之介は慶子になされるまま部屋の天井を見つめた。
「えぇー どうしてぇー ないの?」
 慎之介にはないのだ。彼の体は女だった。

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