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　慶子は女の力で慎之介をドアまで押し込んで身動きできなくさせられるなんて思ってもいなかった。会ったときから彼のか弱さを感じていたが、たった今納得できた。慎之介は自分と同じ女性だからだ。
　慶子は好きになってしまった彼の、自分への反応に苛立った……　今までそんな気持ちが他の男性には全く起きなかった。進一といい、慎之介といい、自分でも理由が分からない。体の中心から湧き出てくる得体の知れないエネルギーを押さえられない。自分の本能が行動させている。
　慎之介の自分への愛情を報告という名目で確認に来たのだ。慎之介に進一との仲に嫉妬してほしかった。その矢先、慶子は彼がウソを付いていたことに怒りが湧いた。彼の顔を下からにらみつけた。もう、後戻りできないこの慎之介への思い。
　初めてこの人からこのゲーム店の前で声を掛けられたとき、あれは運命の出会いだった。そして、リア･ラブゲームを開発した彼からゲームの説明を聞いた。スマートホン･ヒトメボレが恋を取り持ってくれるというウソみたいな説明に心が踊らされた。リア･ラブゲームは現実の世界にあるという話し。あのとき、この人とゲームができたらいいと心から思った。まさに、慶子は慎之介と一生リア･ラブゲームをプレイし続けたいと願った。現実の世界でプレイするスマホ･ゲームなんて作れるわけがないと思ったが、彼の説明を聞くとそうなる気がしてきた。彼の夢がゲームそのものだ。現実社会で愛を築くゲーム。
「初めてあなたに会ったとき、あなたを好きになったの……　わたしとあなた、こうなる運命だった。あなたに説明されたヒトメボレを使ってあなたはわたしを一目ぼれさせたの？　そんなこと、あのスマホはできないよね？　だって、あたし、店の前で初めてあなたを見たとき、あなたを好きになっていたのだもの。でも、あなたはひどい人、スマホでわたしをほれさせたなんて、ひどすぎるわ、どうしてそんなウソを言うの？」

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