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トライアングルパートナー

第7章 小山内慶子

「なにー? 必ず? 結ばれる? 運命的な? ラブゲーム? 何、イっちゃってるの? そんなことがあるわけないだろ?」
「フフフ 係長はこのあたしのスマホが見えてしまったのですよ」
「えっ? きみのスマホを見たらどうにかなるのか? そんなスマホ、だれにでも見られるのだろ?」
「違います。さっき、意中の人を振り向かせることができる、って言いましたよね? このスマホは、だれでも見られるわけではないのです。係長とあたしは結ばれる運命になったからお互いのスマホが見えるのです。商品名がヒトメボレの意味は説明を聞かれましたか?」
「き、きみは、何を言ってるんだ。そんなこと…… あり得ないよ、きみと僕がありえないだろ?」
 進一はとっさに言葉を返した。職場で若い女性職員と恋愛についての会話を、それもこんなに顔を近づけて話しているなど、信じれないことだった。
「あたしと係長は愛に飢えているのよ、一つでは満たされない、強欲な愛ね。似た者同士ってこと。これから仲良くしましょー 係長さん」
 慶子の言動が今までと違ってさらに距離が近くなってきた。彼女が物理的な距離を詰めてくる。体が近づいてきたからというだけではない。接し方が今までと違って、なれなれしい。信じられないことに、いつの間にか、進一は慶子の手を両手で握っていた。
「いかん、いかん。きみは部下で私は上司だよ。そんな関係になるわけないよ」
 進一は慶子の手を慌てて放した。
「そんな道理が強欲な愛を求めるものには通じないんですよ、係長さん…… もう、あたしたちはお友だち以上です。あたしのヒトメボレを見ちゃったんですもの、あたしたちは、運命のお友だちです。それもリア・ラブゲームをいっしょに楽しむ恋人です」

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