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トライアングルパートナー

第11章 慶子と慎之助

 慶子の顔がひょう変した。
「何それ? あんた、つまり、今までの話はみんな嘘だったわけね? あたしを騙したのね。ゲーム詐欺? になるの? とにかく、許さないわ、あたしを見くびらないで、だれだと思ってるの? 小山内グループの次期総帥・小山内慶子さまよ」 
 そう言った慶子はどや顔をして、慎之助のネクタイをつかむと、顔を近づけてにらんだ。
「やだなぁー ち、違います。名前だけが嘘です。最初から僕はあなたに神さまだなんて言ってませんよ」
「え? そうよね? あたしも神さまなんて今まで見たことないし、聞くだけだものね。聞いていたら分かるものね。でも、それって、あたしが勝手に思い込むように、あんたが仕向けたってことでしょ? それは、りっぱな詐欺でしょ? あんた、あたしが訴えたら前科者よぉー え? どうするの?」
 慎之助は神ではないし、神見習いからも挫折し、転落した身分である。この上、人間から訴えられて有罪にされたら、もう天界には復帰できないこと確実である。しかし、落ちぶれた身とは言え、彼には人間以上の法力は持っている。こんなかわいい子にそんな法力を使うなんて大人げない? 否、神げない、と思ったが、そこは器の小さい神の使い見習い落ちこぼれである。慶子に必死に食い下がろうとする。 
「あーー そんなこと、言ってさ、じゃ、とっておきの法力を使っちゃおうかな? どうしょっかなぁー」
 慎之助は慶子にのしかかられて、ソファーの上に倒され、ネクタイを締め上げられている、という情けない姿での発言だ。
「えぇっ? ホウキ? あんた、この状態であたしにホウキで立ち向かうっていうの? 」

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