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トライアングルパートナー

第11章 慶子と慎之助

 きれい好きな慎之助はショーケースをクロスで磨くことはもちろん、店内はホウキとチリトリで暇さえあれば奇麗を心掛けている。店長室の隅にホウキとチリトリが置かれているのでそれを慶子は見ての言葉である。
「ち、違います。ホウリキですよ、ホウリキ。いいですか、こういうことが僕はできるのです」
 慎之助は慶子にソファーにねじ伏せられている体制から右腕を伸ばし、パンツのポケットから自ら開発した自信作「ヒトメボレ」のスマホをひねり出した。スマホを握ると慶子の乳房の上ににそっと押し当てた。慶子はびっくりして目を開く。
「きみは僕を好きになる。愛する、どうしょうもなく僕を愛してしまう」
 横になった姿勢で、慎之助はしばらく慶子の顔を見上げていた。慶子は考えている。
「どう? もう、ネクタイを持つ手が恥ずかしくなったでしょ? 自分の蛮行が恥ずかしいでしょ?」
 慎之助の体の上に上半身を乗せていた慶子は起き上がってスカートのポケットを探った。そこからスマホ「ヒトメボレ」をつかんだ。
「これか? さっきから振動していたのは?」
「そう僕のつかんだスマホから愛が放出されてきみの持つスマホに愛が流れるんだ。愛の原子が流れる。きみは僕の愛で満たされたってことだ。だから、僕を無条件で愛するようになったってこと…… どう? なんか感じるかい?」
 慶子は振動するヒトメボレを持って考えている。
「じゃさ、あんたのも今、振動してるってこと? あたしとラブゲームが始まるの? あんたもあたしに感じてるの?」
「えぇ? そう、まあ、そういうことになるかな?」
 慎之助は慶子の胸に押し当てたヒトメボレが振動しているのを右手に感じ、やがて、その振動は彼の心臓に届いた。
「ねえ、慎之助、ラブゲームって、どういうゲームなの?」
「えっ、呼び捨てにしないで慎之助さんにしてくれる? ほんと、お嬢さまだな」

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