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トライアングルパートナー

第12章 ゲームの対戦相手

 今、Rを押したら、このエレベーターは邪心界に行ってしまう。間違いなく慶子の魂はエロMエッサイ無様にもてあそばされてしまうだろう。慎之助はそれは絶対避けなければならない、と強く思った。なぜなら、慎之助の心には大好きな慶子を守りたい、という気持ちが芽生えていた。彼は慶子と時間を共有するに従い、一歩一歩、心は人間に近づいていた。
 そうとは気が付いていない慎之助にとって、慶子は今までにない人間になっていた。
「あぁー かわいいぃー」
 慎之助は思っていたことが声に出てしまった。男女の恋の橋渡しという修業はしていても、女性との交際など慎之助にはありえないことだった。それ以前に、天界にいた彼は、人間との交流が今までなかった。
「えぇ?? あんた、今ごろ何言ってるの?」
「ご、ごめんなさい、女の子にあまりなれていないので……」
「ええっ? そうなの?…… でも、付き合った子はいるんでしょ?」
 慶子はこのイケメンがどう見ても遊んでいるとしか思えない。周囲の女が言い寄ってくるに違いない。なれていないなんて、よく言うわ、どれだけの女を泣かせてきたんだ? このイケメン、うぶな振りをするなんて、ある意味、嫌みに思う。いつもなら警戒マックスの男の筆頭なのに、ヒトメボレのせいであたしはこいつのことが好きになってしまったの? 慶子は体の芯が熱くなるのを感じた。エレベーターのドアが開いた。
「どうぞ……」
「あら、着いたの? そうよね? 2階だものね。でもさ、階段とか使ったほうが早かったんじゃない?」

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