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ナカまで愛でてトロトロに溶かして

第1章 【私、TL漫画家です】






タカラアキという名が世に出たのはちょうど一年前。




「お前の中のセックスってこんなもんか?まだ伝わって来ねぇよ、お前の泥臭い根底に眠る叫びがよ」




そう言われ何度やり直しさせられただろうか。
自暴自棄になった時もあった。
泣き叫んで鍵山さんに食って掛かった時も。
それでも“辞める”と言わなかった私を一度たりとも見捨てる事はなかった。




「息吹き掛けろよ、お前が主人公になりきるんだ、お前はどんなセックスでイキ狂うんだ?」




そう煽られ真に受けて生み出したのがデビュー作の『カナリア』に出てくる成美だ。
借金返済の為に風俗へ行き挙句の果てにはAVの世界へ足を踏み入れる王道ものだが、鍵山さんと二人三脚で転落人生に見えて新たな自分の天職として成し遂げた一人の女を見事に描ききった。




主人公になりきる憑依型になったのはその頃から。



だからよくヘッドホンして大画面でAV流しながら液タブに描いたりしてアシスタントの子たちを困惑させてしまっていた。




身体が鈍ってきたり神が降りてこない時は隣の部屋をジム部屋にしていてちょっとした運動が出来るの。
バランスボールやヨガマット、筋トレ器具が諸々。
主にお尻と二の腕を引き締める筋トレを空いた時間にメニュー組んでやっている。




膝と肘をつけての腕立て伏せはかなりの汗が出る。
TRXといって天井に吊り輪をゴムのようなもので吊り下げ、引っ張ってスクワットしたり足に引っ掛け下半身を引き締めたりと一応身体の事は考えてる。




運動中の声を喘ぎ声と勘違いして蓮くんを困らせてしまう事も。




「あれ?今日遅かったね?待ってたのに」




「もう帰られたんですか?お相手の方」




「は?」




サラサラの前髪で顔を隠してモジモジしながら変な様子の蓮くんに顔を近付ける。
耳まで真っ赤にして変な子。




「僕、ちゃんと時間通りに来ました、でもお取り込み中だったので外で時間潰したんですからね?ったくもう〜」




次は膨れっ面で怒ってる。
でも頭の中ではもうピンと来てる。
本当、可愛いな。
手を取って連れてってあげる。
キミはまだ知らなかったかな?








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