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ナカまで愛でてトロトロに溶かして

第8章 【栄光の座】






「クソっ……今すぐ抱きてぇ」




「シッ!何処で誰が聞いてるかわからないですよ?」




今はあくまで仕事関係で居てもらわなくちゃ困る……身が保たない。




会場に着くと、続々と他の受賞者も来ていて挨拶を済ませた。
顔出ししない作家さんもロビーで会えたりして謙遜しながらも目を見て挨拶出来た。




「悔しいけど一歩及ばずでした」と握手を求められたのはランキング2位で切磋琢磨した相手だ。
何度かランキング争いしていて顔も知っている男性のTL漫画家さん。
握手したところもバッチリ写真に収められてしまった。
勿論、彼は顔出しもしている。




今回、初受賞の私は初顔出しなわけで記者やカメラマンに張り付かれている。
“背筋伸ばして堂々としてろ”って鍵山さんには言われてるけど緊張が勝って顔が強ばる。




会場に並ぶとより一層記者の数も増えていた。
控室とは違って空気がガラッと変わり見た事のある漫画家や初めましての顔ぶれが並ぶ。
鍵山さんが言ってた通り、顔出しNGの漫画家は顔だけ隠れる被り物を被っていて異様な雰囲気を放っていた。




え、私もそうした方が良かったのかな?と思ってしまう。
でも、出すべきだと言ってくれた鍵山さんを信じる事にする。
全てを任せてきた相手だからこそ何も不安はない。
数々の賞の授与が行われ、とうとう最優秀賞の授与が始まる。





“20○○年電子コミックマンガ大賞BL·TL部門【優秀賞】はタカラアキさん、〈錆と鎖〉です!”




名前を呼ばれて登壇すると、フラッシュが一斉にたかれた。
賞状と記念品の盾を受け取り、マイクの前で一言コメントしなくてはならない。
緊張もMAXに近い。
フラッシュが眩しい。
会場に居る何百もの目が私に集中してるのを肌で感じていた。




チラッと会場に居た鍵山さんと目が合う。
優しく頷いてくださったので、此処はひとつ、私らしく簡潔に感謝の意を述べるべきだと思った。
一瞬で頭が真っ白になったが背筋を伸ばし胸を張った。




「改めまして、タカラアキと申します。この度は〈錆と鎖〉にこのような素晴らしい賞を頂き、とても身に余る思いです。正直出し切った感は否めません、この作品が私の人生を変えた事は事実ですが、もっと良い作品はこの世界に有り溢れています。









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