ナカまで愛でてトロトロに溶かして
第1章 【私、TL漫画家です】
冷蔵庫から冷やしてくれていたイチゴを出して摘みながらソファーでタブレットに描く。
どんどんアシスタントの方に書き足して欲しい部分を細かく指示つけて転送していく。
「あっ…」
「キャッ…」
とか声が聴こえてくるのは日常茶飯事なわけで。
大胆なシーンの背景足しをお願いしているがほとんど仕上がってる男女を見るたびに思わず声が出るみたい。
大きく伸びして今日の分を終えた私はたまに2人を後ろから見てからかう。
「あ、ねぇ、このシーン上手く描けたと思わない?自信作だなぁ〜」と距離を縮める。
「え、あれ?終わったんですか?」とキョロキョロする蓮くんにイチゴを摘んでアーンして食べさせる。
そこのショットをスマホで撮るのだ。
「あっ!僕変な顔しちゃいました」って真っ赤になりながらモグモグして背景足してくれてるんだもんね。
隣の千景ちゃんにもアーンして「何で僕だけ写真撮るんすか」って拗ねる。
「うん、今度の読み切りでクリスマス企画あるからさ、普段とは違う甘めのも描いてみようかなって思って、今のも何処かで使ってみよーっと」
「うわ、アキ先生の読み切りとこ楽しみ過ぎる〜!頑張って仕上げないと」
不倫もSMもドロドロしたの一旦お休みして極甘でも描いてみるか。
まぁ、私についてる読者ファンが物足りなさを感じるかも知れないけど。
その期待全部裏切るのも良いかも知れない。
最近、そう思えるようになってきた。
読者ありきの世界だけどたまには裏切れよって誰かさんも言ってたしね。
「あ、蓮くん、ここもうちょっと物足そうか、何だろ、もう少し良い意味でのガサツ感が欲しい」
「あ、はい……じゃ……コレとか…どうっすか?」
その場で確認して指示して仕上げていくこの瞬間が好き。
だからたまには手を止めてアシスタントに任せっきりは極力しない。
「お、良いね、蓮くんのガサツ感出たね」
「ちょ、それ褒めてます?」
「アハハ、褒めてる褒めてる」
はい、と次はイチゴ咥えたまま差し出したら流石に拒否られて。
シュン…として拗ねたフリしたら「アキ先生、御冗談はその辺にして身体休めてください」と千景ちゃんから喝が入る。