ナカまで愛でてトロトロに溶かして
第2章 【それぞれの葛藤】
笑顔でも言ってる事は喧嘩腰。
売られた喧嘩は買いますよ。
勿論、暴力の一切ない喧嘩でしたらね。
「今だけだよ、後で痛い目に遭うかもって忠告してあげてんじゃん」と一人が言ってきた。
メイク濃いよ?
いかにも噂好きって顔してる。
そうか、この人たち、漫画家ではなく小説家グループだ。
オカザキウキョウさんは官能小説家でしたね。
「ありがとうございます、一発屋にならないよう腰を据えて頑張りますね」
これでもかってくらい満面の笑みを見せてやった。
手を洗い、「それではお先に失礼します」とヒールを鳴らし、その場を立ち去った。
しまった………やってしまった。
随分デカい態度を取ってしまったなぁ。
また話のネタを提供したようなものだ。
突っ走った後に後悔の嵐。
後悔先に立たずとはこの事。
いくら腹が立ったとはいえ、子供じみた真似をして余計に足元掬われたかも。
明日は我が身…だろうか。
「アキ先生、どうかした?酔ってる?」なんて顔を覗き込んでくる鍵山さんとわざとらしく距離を取ってしまう。
「あら、何処行ってたの?アキちゃん、こっち来て、紹介したい人が居るの」って豪快に私の手を取りあるテーブルへ連れてってくれる柊ミコト先生。
すっかり“アキちゃん”と呼ばれてテンションが爆上がりしてしまう。
さっきのトイレでの絡みすら忘れてしまうほどたくさんお喋りしてくださった。
若干あのグループからは睨まれてる気がしたけど見ないようにしていた。
TL漫画家タカラアキという肩書きは顔見せした事により、業界では多くの人に知れ渡る結果となった。
まずは第一歩を踏み出せた…と鍵山さんは満足そうにしている。
それすらまだピンと来ていない私は何だか置き去りにされているような感覚で、収穫といえば柊ミコト先生にお会い出来た事だけだった。
パーティーも終わってほろ酔い状態だけどちゃんと一人で帰れるくらいの意識はある。
用意して頂いたドレスコードも汚したくないし。
関係者にお礼を言ってやっとエレベーターに乗れた。
ふと気を抜いた2人きり。
壁側に追いやられて激しく唇を奪う鍵山さんに一瞬戸惑う。