ナカまで愛でてトロトロに溶かして
第2章 【それぞれの葛藤】
大きな溜め息ついて“無”になる。
女子トイレって何でこうも悪口言いたがる連中がこぞってやって来るんだろう。
早速入ってきたグループがメイク直しでもしながら話してる。
完全に出るタイミングを失った。
息を潜めて出て行くのを待つしかない。
「見た?タカラアキ」
「見た見た、結構若くない?」
「だよね、アレ相当遊ばれてそう」
うわ、早速、話のネタにされてんじゃん。
やっぱり目立ってたんだね。
彼女たちは漫画家さんかな?
そうでもなさそうな。
ご挨拶させて頂いた中には居なかった声質だった。
「担当、鍵山さんでしょ〜?今日もベッタリじゃん?俺の女ってアピールしてるつもりなのかな?今、タカラアキにゾッコンらしいよ、他に抱えてる担当作家かなり手抜いてるってボヤいてた、ほら、オカザキウキョウさんとか」
ふーん、私の知ってる鍵山さんはそんな仕事に手を抜いたりするはずないけどね。
噂って本当面倒だな。
悪い噂は100%ひとり歩きする。
「もうデキてるね、あの2人」
「鍵山さんが入れ込んでるんでしょ?もうヤラレてるでしょ、手早いもん」
「そうそう、ヤラレまくった後はゴミのように捨てられるのがオチ!そうとも知らずに挨拶回ってたね、可哀想に」
「あぁ、私も担当してくれないかな?鍵山さんだったらワンチャンでもアリかな〜?キャハハ!」
「本当若い子好きだよね、鍵山さんに限らず男って」
「そうやって仕事取って来たんだもん、売れなくなったら捨てて早く次に乗り換える…的な?もう次の子捜し当ててたりしてね?次のパーティーでタカラアキ居なかったら絶対そうじゃない?他の子連れて挨拶回りさせてるかも!?」
堪らなくなり鍵を開けて個室から出てしまった。
そんなヤジに対して笑顔で対応してしまう私はまだケツが青いのだろうか。
若い子…?
私そんな若くねぇし。
死ぬ気で作品生み出してんだよ。
突如個室から現れた私に顔真っ青にして、さっきから聴いてりゃゴチャゴチャと煩い連中だな。
「実力でのし上がって何が悪いですか?例えその噂が事実だとしても私は鍵山さんをリスペクトしてるし今後も担当して欲しいって思ってます、それに、私、捨てられる側になった覚えはないので」