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第1章 0
私、神楽萌々子(カグラ モモコ)はとあるマンションの一室の前にいた。
マンションと言っても少し老朽化しているが。何度も、メモを見て確かめた住所、ここに、私の初恋の人が住んでいる。
小さいショルダーバッグに、ピンクのチュニック、白いフレアスカートの出で立ちの私はそこまで目立っていないはず。
軋みそうな木造の階段を踏みしめて、心臓を高鳴らせて私はアパートの一室の前に立ち、何度か深呼吸を繰り返す。
インターホンを鳴らす指が震えてしまう。
頭の中で何度も何度もシミュレーションしてきたはずなのに一気にそれが吹き飛んでしまうくらい。
口の中に溜まった唾をゴクリ、と飲み干し覚悟を決める。
拒絶されたらどうしよう。
全然知らない人が出てきたら……??
頭の中がグルグルと周り、足元がふらつきそうになる。
インターホンに置かれた指がじんわりと熱を持つ。押さないといけないのに。
押さなきゃ始まらないのに。
生暖かい風が頬を掠める度に、自分の意気地のなさに苛立ちを覚えてきた。
目を閉じて、指に力を込めようとする。
インターホンのボタンをカチリ、と押した。
間の抜けたような音が鳴り、中から人がいるような気配と音がする。
2分もしないうちに、パタパタとかけてきて、どちら様ですか、とゆっくりとした男性にしては高めの声が響いた。
訝しんでるのだう。私は顔を上げておずおずと会釈をする。
それで、私だということに気づいたらしい。
「もしかして……もも……ちゃん?? 」
明らかに困惑と戸惑いを表してる声。私は泣きそうになりながらも、しどろもどろになりながら何とか声を出そうとする。
でも、絞り出した声はかすれ声と化してうまい言葉にはならない。
彼は鍵を開けて、まじまじと私を見つめていた。
まだ、季節は夏で、暑さを迎えたばかり。太陽とセミがうるさい時期だ。
「本当に……来たんだ…… 」
彼がぽつりとこぼした言葉に身体を震わせて、ごめんなさい、と言い踵を返そうとした。
「あ、違う、違う、勘違いさせたなら謝るよ。あの、うん、ごめん」
彼は私の腕をやんわりと掴む、頭を掻きながら、恐る恐ると言う感じで、
「中に……入る?? 」
と聞いてきた。
私は首を縦にこくりと振り、彼の後に続いて中に入る。
マンションと言っても少し老朽化しているが。何度も、メモを見て確かめた住所、ここに、私の初恋の人が住んでいる。
小さいショルダーバッグに、ピンクのチュニック、白いフレアスカートの出で立ちの私はそこまで目立っていないはず。
軋みそうな木造の階段を踏みしめて、心臓を高鳴らせて私はアパートの一室の前に立ち、何度か深呼吸を繰り返す。
インターホンを鳴らす指が震えてしまう。
頭の中で何度も何度もシミュレーションしてきたはずなのに一気にそれが吹き飛んでしまうくらい。
口の中に溜まった唾をゴクリ、と飲み干し覚悟を決める。
拒絶されたらどうしよう。
全然知らない人が出てきたら……??
頭の中がグルグルと周り、足元がふらつきそうになる。
インターホンに置かれた指がじんわりと熱を持つ。押さないといけないのに。
押さなきゃ始まらないのに。
生暖かい風が頬を掠める度に、自分の意気地のなさに苛立ちを覚えてきた。
目を閉じて、指に力を込めようとする。
インターホンのボタンをカチリ、と押した。
間の抜けたような音が鳴り、中から人がいるような気配と音がする。
2分もしないうちに、パタパタとかけてきて、どちら様ですか、とゆっくりとした男性にしては高めの声が響いた。
訝しんでるのだう。私は顔を上げておずおずと会釈をする。
それで、私だということに気づいたらしい。
「もしかして……もも……ちゃん?? 」
明らかに困惑と戸惑いを表してる声。私は泣きそうになりながらも、しどろもどろになりながら何とか声を出そうとする。
でも、絞り出した声はかすれ声と化してうまい言葉にはならない。
彼は鍵を開けて、まじまじと私を見つめていた。
まだ、季節は夏で、暑さを迎えたばかり。太陽とセミがうるさい時期だ。
「本当に……来たんだ…… 」
彼がぽつりとこぼした言葉に身体を震わせて、ごめんなさい、と言い踵を返そうとした。
「あ、違う、違う、勘違いさせたなら謝るよ。あの、うん、ごめん」
彼は私の腕をやんわりと掴む、頭を掻きながら、恐る恐ると言う感じで、
「中に……入る?? 」
と聞いてきた。
私は首を縦にこくりと振り、彼の後に続いて中に入る。